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楽器寄附ふるさと納税とは|自治体と連携し、楽器不足の課題を解決する仕組みとは

「中学校の楽器が不足している。なんとかならないか」

そんな一言がきっかけではじまった取り組みが「楽器寄附ふるさと納税」です。三重県いなべ市に寄せられた一言からはじまった本取り組みは、現在、全国計16の行政(2020年12月9日現在)が参加しています。

今回は、使われなくなった休眠楽器を通じて人とモノ、さらには想いを繋ぐ「楽器寄附ふるさと納税」の取り組みの裏側に迫ります。

楽器寄附ふるさと納税とは?小さな一言からはじまった取り組みは全国24の自治体が参加する大きな取り組みに

楽器寄附ふるさと納税の仕組みとはじまり

楽器寄附ふるさと納税とは、行政を通じて、不要になった楽器を吹奏楽部や音楽団体へ向けて寄附でき、さらにはふるさと納税の制度が適用されるというもの。

ふるさと納税では、寄附金に対して返礼品を受け取るというのが一般的であるのに対し、楽器寄附ふるさと納税の仕組みは、家庭などに眠る楽器を自治体を通し寄附することで、寄附楽器の査定価格が税金から控除されるという、ふるさと納税制度を活用した新しい納税スタイルです。

マーケットエンタープライズグループ(以下、ME)では、国内初の休眠楽器の寄附を受け入れる「楽器寄附ふるさと納税」の取り組みに、査定協力事業者として参画しています。参画のきっかけは、三重県いなべ市の日沖市長からMEが持つネット型リユース事業で活用している査定の仕組みを用いて学校での楽器不足を解決できないかと、ご相談をいただいたことでした。

MEは、「Win Winの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団である」ことを理念としている企業。寄附者と受け取る側、双方がWin Winの関係を築ける取り組みであることに加え、「生まれ育った街や応援したい街に寄附をするという本来の趣旨に沿った仕組みを構築したい」という日沖市長の想いに共感し参画を決定、2018年10月に本取り組みはスタートしました。

取り組み開始時の記者会見

三重県いなべ市との連携から始まった楽器寄附ふるさと納税の取り組みは、現在は計24の自治体(2020年12月9日現在)と共に、全国の休眠楽器を、各自治体の楽器が不足している公立学校などの教育機関へ寄附しています。今までにクラリネットやフルートをはじめとする約350以上のさまざまな楽器が生徒たちの手に渡っていきました。

2020年12月9日現在、参画している16の自治体

寄附された楽器で演奏する吹奏楽部の音色

本来は、各自治体を通して楽器の寄附が行われるため、寄附者から直接楽器を手渡されるわけではありません。しかしこの取り組みは、楽器を寄附するだけではなく、想いをつなぐ取り組みです。生徒たちは直接手渡されない代わりに、寄附楽器を使用し、感謝の気持ちを込めた演奏会を開催しています。

茨城県行方市で開催された寄贈式の様子

2020年11月6日、茨城県行方市にある北浦中学校の体育館にて、寄贈された楽器を生徒たちへ直接手渡す、寄贈式が執り行われました。

寄贈式で実際に寄贈された楽器

当日は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の対策が行われた上で、行方市の鈴木市長をはじめ、茨城県出身で寄贈者としてご出席された作家の額田氏、そして楽器寄附ふるさと納税実行委員会の関係者が出席しました。

寄贈式当日の様子

吹奏楽部の代表として挨拶したある生徒は、「楽器が足りずに困っていた。取り組みを通じて楽器を寄附してくださった方に感謝しています。」など感謝の意が述べられていました。こうして生徒たちのもとに楽器が渡っていきます。

寄贈式の後、寄贈された楽器を使用し、北浦中学校吹奏楽部による演奏が披露されました。寄附者の想いを受け取った生徒たちは、寄附された楽器を使用し、素敵な音色を体育館に響き渡らせていました。

全国各地どこからでも。オンライン演奏会を実施

寄贈式で披露された演奏会のように、想いの詰まった楽器を受け取る生徒たちに受け継ぐ意味を感じてほしいということで、さまざまな場所で演奏会が開催されてきました。

しかし、近年新型コロナウィルス感染症の影響により、部活動の休止を余儀なくされたり演奏会やコンテストが中止になるケースが相次いでいます。

そこで、楽器寄附ふるさと納税実行委員会では、音楽に関わる生徒たちを少しでも応援するために、オンライン演奏会を開催しています。

オンライン演奏会には、寄附された楽器を使用して、演奏をする吹奏楽部も参加しています。そのため会場に直接足を運ぶことが難しくても、寄附された楽器を使用した演奏会を全国各地どこからでも見ることができます。

恩返しならぬ「音返し」を。生徒や関係者からの声を紹介

楽器寄附ふるさと納税の取り組みには、株式会社パシュートと自治体、そしてMEが楽器寄附ふるさと納税実行委員会としてこの取り組みを先導しています。

ここでは、仕組みの構築において苦労したエピソードや、寄附者から寄せられた応援メッセージ、さらには寄附された楽器を使用している生徒からの感謝の言葉を紹介します。

仕組みの構築には苦労したことも。それでもこの取り組みを続ける理由。

楽器寄附ふるさと納税の取り組みを仕組化するまでには、さまざまな障壁がありました。ここでは、楽器寄附ふるさと納税の実行委員会として活動している株式会社パシュートの楽器寄附ふるさと納税の担当者から伺った、仕組みの構築において苦労したエピソードを紹介します。


<株式会社パシュートの楽器寄附ふるさと納税担当者より>

本質に沿った、仕組みの構築は特に難しいと感じました。
ふるさと納税はもともと、モノ(返礼品)ありきで考えられていることが多いです。しかし本来は「地域とのつながり」「地域に貢献したい」という想いがあっての仕組み。楽器寄附ふるさと納税では、楽器不足を解消するだけではなく、「地域とのつながり」ありきで仕組みを構築することは難しいと感じましたが、それでもこれは取り組むべきことだと確信しています。今後も関係人口の創出をするため、全国へ取り組みを広げていきたいと考えています。

本来の趣旨に沿った取り組みを広げていこうと、仕組みを整えるだけではなく、上述で紹介したようなオンライン演奏会を開催するなど、楽器寄附ふるさと納税実行委員会では更なる関係人口創出のために、想いをつなげるための活動をしています。

「楽器不足で困る生徒をゼロに。」関係者が語る想い

寄附される楽器には、さまざまな思い出が詰まっているもの。亡くなったご家族の楽器があるけど、思い出がたくさんあるから捨てるに捨てられない。若い方に使っていただけるなら、ぜひ寄附したい、と自治体に直接ご連絡をいただいたこともあるほどです。

ここでは株式会社パシュートとMEの楽器寄附ふるさと納税担当者から伺った、印象的なエピソードを紹介します。

<株式会社パシュートの楽器寄附ふるさと納税の担当者より>
寄附していただいた方や生徒たちからいただくメッセージはとても嬉しいです。また想定外にも行政の職員さんから「楽器寄附ふるさと納税の取り組みに携われて、仕事の意義を感じることができた。前向きな気持ちになれる。」と嬉しい声をいただいたことがあります。
使用しなくなった楽器をもう一度使用してほしい寄附者、楽器不足が解消される生徒たち、仕事の意義を感じてもらえる行政の職員さんたち、関わる方全員に対し、Win Winの関係を築けています。そして基本的には嬉しいことだらけ。この取り組みが全国に広がり、想いをつなげることで、楽器不足で困る生徒をゼロにしていきたいです。

<MEの楽器寄附ふるさと納税の担当者より>
趣味でサックスの演奏をやっていたという方から、「あごの力が弱くなって吹けなくなった、これを機に手放そうと思う」といったご連絡をいただいたことがありました。
その方からしたら、寄附ではなく通常の売却を考えてもいいところを、「30年近くメンテナンスをして使い続けた楽器だからこそ、大切に使ってくれる方に使ってほしい」という想いがあり、楽器寄附ふるさと納税の取り組みを利用してくださったとのことでした。
そして無事に寄附が完了した際には、「楽器寄附の取り組みをやってくれて、ありがとうございます」といった趣旨の長文メールをいただきまして、そのときは本当に震えるほど嬉しかったのを覚えています。

寄附していただいた楽器を査定している様子

想いとともに届けられる感謝の声と応援メッセージ

楽器を受け取った生徒たちからは、自主的に寄附者に対して「大事に使います」といったお礼のお手紙であったり、演奏している動画が送られているそうです。

一方で、寄附者は「楽器を通して生徒たちに喜んでもらいたい」「もう一度楽器を輝ける場所に。」そんな想いとともに大切にされていた楽器を寄附されています。そんな楽器とともに届いた寄附者からの応援メッセージを一部抜粋をして紹介します。

<寄附者からの応援メッセージ①>
「いつかまた使うかも」そう思い長いこと押入れにしまい込んでいました。青春時代を共に過ごしたこの楽器にはたくさんの思い出があります。数年前に母校の演奏会に参加し30年ぶりに吹いてみましたが、30年のブランクは大きく、思うように響かせることはできませんでした。その後も吹くことはなく、部屋の片隅に置いたままでした。今回、楽器寄附ふるさと納税を知り、音楽を愛する誰かが、またこの楽器に息を吹き込み生き返らせてくれたらと思い決断しました。

<寄附者からの応援メッセージ②>
数十年前の学生時代に吹奏楽部に所属し、毎日練習に励んでいました。苦しい思いも、悔し涙を流したことも、そして楽しい思いもたくさんありました。今となっては全てが大切な良い思い出です。 その思い出のたくさんつまったトランペットを手放すことができずにいましたが、 今回このようなふるさと納税があることを新聞で知り、学生さんのためになるのなら、演奏することが楽器の本来の姿だと、手放す決心をしました。皆さんのこれからの活躍を心より応援しています。頑張ってください。

<寄附者からの応援メッセージ③>
たまたま聞いていたNHKラジオの番組の中で、楽器寄付ふるさと納税のことを知りました。 楽器を買い換えて、以前のものがそのままになっており、このようなかたちで活用していただけて嬉しいです。シルフィードはヤマハやセルマー、ヤナギサワのような有名な会社の楽器ではありませんが、初心者の方には非常に吹きやすい楽器だと思います。でも半年に1回はメンテナンスに出してくださいね。それは有名どころの楽器でも同じです。 私は今、サックスのアンサンブルに入っています。そんなわけでいくつかある自治体のなかから●●市を選びました。 練習頑張って下さい!

(楽器とともに寄附者から届いた手紙)

(寄贈式にて寄せられた寄附者からの手紙)

寄附者からの応援メッセージからみてとれるように、一つひとつの楽器には、さまざまな想いがのせられて寄附されています。こうした想いが届けられ、楽器を受け取った生徒たちからも、感謝の声が寄せられています。

香川県東かがわ市の東かがわ市立大川中学校から届いた感謝の声

新たな楽器が増えることで、演奏の幅が広がり、生徒たちに新たな経験を提供することが可能です。吹奏楽部として限りがある時間を過ごしていくなかで、この取り組みが充実した時間を過ごす一端となっていることがわかります。

<お問い合わせについて>
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寄附をご検討の方からのお問い合わせはこちら
※当社へのお問い合わせ等については、本記事下のお問い合わせフォームよりお願いいたします。

<寄附楽器のお申し込みについて>

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楽器寄附ふるさと納税を通じて全国各地へ届けたい想いー。

寄贈式での演奏会の様子

より多くの生徒、そして寄附してくださる方に笑顔を届けるには、今後も全国展開を進めていかなければいけません。

MEは、消費行動の最適化、および商品価値の再定義化を提案する企業として、「持続可能な社会を実現する最適化商社」というビジョンを掲げていますが、それは消費者に対してのみならず、教育・平和・環境など社会全般にも同様に、最適で持続可能な選択肢を提供すべきであると考えています。

そのため、楽器寄附ふるさと納税の取り組みを通じて、SDGsの達成目標にもある通り、パートナーシップを実現することに加え、公平で質の高い教育を提供し、学習の機会を促進し続けたい。それがMEがこの取り組みを続ける理由です。

この取り組みは楽器だけでなく、他の部活動にも横展開ができると考えています。たとえば弓道部なのにちゃんとした弓がない、漕艇(カヌー)部なのに大会で初めてボートに乗る、といったことは実は本当にある話です。そういった課題をMEが持つ仕組みで、少しでも解決できればと考えています。

▼SDGsの取り組みを紹介する番組、テレビ朝日「しあわせのたね。」でもご紹介いただきました。

これまでもMEでは、核となるリユース事業を通じて、人とモノを繋ぐお手伝いをしてきましたが、この楽器寄附ふるさと納税は、人とモノ、さらには想いをつなぐ取り組みです。

世の中には楽器以外にも価値のある休眠資産がたくさんあるので、MEが持つ仕組みやノウハウを利用し、社会に貢献することで、街が活気づくきっかけとなっていくよう、想いの輪を広げていきたい、と考えています。

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株式会社マーケットエンタープライズは東証プライム上場企業です。「持続可能な社会を実現する最適化商社」をビジョンに掲げ、ネット型リユース事業を中心に、メディア事業、モバイル通信事業を展開しています。

記事を書いた人

Journal編集部

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